論文概要 原題 Prevention and Management of Positional Skull Deformities in Infants 日本語訳...
新生児・乳児の頭蓋変形
論文概要
| 原題 | 新生児・乳児の頭蓋変形 |
| 出版年 | 2023年 |
| 著書 | 加藤理佐 (Risa Kato), 長野伸彦 (Nobuhiko Nagano), 森岡一朗 (Ichiro Morioka) |
| 出処 | https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/4/82_203/_article/-char/ja/ |
論文要旨
- 新生児・乳児の頭蓋骨は柔らかく成長が早いため、出生時や体位の影響で「位置的頭蓋変形症」が発生しやすい。
- 仰向け寝運動の普及によりSIDSは減少したが、位置的頭蓋変形症の発生率が増加している。
- 2次元・3次元評価法やヘルメット治療の効果を研究し、早期診療と適切な介入の重要性を確認。生後1か月時の頭蓋形状が6か月時の変形の重症度を予測でき、重症例は自然経過で改善しにくい。
- 生後4~8か月でヘルメット治療を受けた児は、治療を受けなかった児よりも改善効果が約3倍。
- 治療開始が生後7か月を超えると効果が低下。
- 位置的頭蓋変形症の予防と治療のため、保護者への啓発と科学的基盤の構築が求められる。
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1. はじめに
- 新生児の頭蓋骨は柔らかく成長が早い。
- 出生時や体位などの影響で頭蓋に多面的な変形が起こる。
- 「変形性斜頭症」や「位置的頭蓋変形症」と呼ばれる非病的な頭蓋変形がある。
2. 乳幼児突然死症候群(SIDS)と位置的頭蓋変形症
- 仰向け寝運動の普及によりSIDSは減少したが、位置的頭蓋変形症が増加。
- 日本でも同様の傾向が確認されている。
- 位置的頭蓋変形症は長期的な健康被害を引き起こす可能性がある。
3. 日本大学医学部附属板橋病院の頭蓋変形外来
- 小児科医の頭蓋変形理解を促進するため、頭蓋変形外来を開設。
- 診察や検査を通じて、病的な頭蓋変形を見逃さない体制を整備。
- 初診時の月齢が早まる傾向があり、早期診療の重要性が示された。
4. 位置的頭蓋変形症と頭蓋骨縫合早期癒合症
- 位置的頭蓋変形症:体位や枕などの圧力により平行四辺形様の変形が生じる。
- 頭蓋骨縫合早期癒合症:特定の骨縫合が癒合し、台形様や舟状などの形態を示す。
- 鑑別のためには形状観察や触診が重要。
5. 評価方法
- 2次元評価(ノギスやメジャー使用)と3次元評価(3Dスキャナー)の比較を実施。
- 約85%の乳児で評価結果が一致。
- 2次元評価は簡易的で臨床に適用しやすい可能性がある。
6. 頭蓋形状と精神運動発達の関連
- 早産児は正期産児よりも長頭の傾向が強い。
- 頭蓋形状が精神運動発達に影響を与える可能性がある。
7. 健常児の位置的頭蓋変形症の有病率
- 生後1か月の健常児の約64.7%が位置的頭蓋変形症と診断される。
- 重症以上の割合は6.6%。
- 日中の「Tummy Time(うつ伏せ時間)」が予防に効果的。
8. 頭蓋形状の自然経過と予後予測
- 生後1か月時の重症度で生後6か月時の重症度を予測可能。
- 生後1か月から3か月で頭蓋変形がピークとなるが、多くの場合6か月までに改善。
- 重症例の多くは自然経過では改善しにくい。
9. ヘルメット治療
- 生後4~8か月でヘルメット治療を受けた児は、治療を受けなかった児よりも改善効果が約3倍。
- 治療開始が生後7か月を超えると効果が低下。
- 副作用(湿疹など)は報告されていない。
10. おわりに
- 保護者の相談に基づく診療と研究が進展中。
- 臨床データを蓄積し、科学的な基盤の構築を目指している。