論文概要 原題 Effects of adherence to treatment for repositioning therapy, physical therapy, and cranial...
LED スキャナーを用いた採型によるミシガン頭蓋形状矯正ヘルメット(クラスⅡ 医療機器)の使用経験
論文概要
| 原題 | LED スキャナーを用いた採型によるミシガン頭蓋形 状矯正ヘルメット(クラスⅡ 医療機器)の使用経験 |
| 出版年 | 2019年 |
| 著書 | 金子 剛、高松 亜子、彦坂 信、山口 和章、金子 章子 |
| 出処 | https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1552201766 |
論文要旨
- 乳児の頭蓋形状変形(変形性斜頭・短頭)は外圧によるもので、多くは自然改善が期待できるが、重症例では矯正治療が必要となる。
- ミシガン頭蓋形状矯正ヘルメット(MCRO)は、3DスキャンとCAD/CAM技術を活用して効率的に製作される。
- MCROは平坦部を除圧して発育を促進し、安全かつ非侵襲的な治療法として有用。
- 治療は生後6か月以内が最も効果的で、適応基準は中等度以上の斜頭または短頭に限定される。日本国内でも2018年に薬事承認を取得し、医療機器として普及が進んでいる。
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はじめに
- 日本では乳児の頭の変形が一般的とされ、自然改善を期待する文化があった。
- 米国では1992年に「Back to Sleep」キャンペーンの影響で、乳児突然死症候群(SIDS)の予防とともに斜頭や短頭の増加が報告された。
- 矯正用ヘルメット治療が米国で普及し、1998年に初めてFDA承認を取得。
- 日本では2011年に国立成育医療研究センターでヘルメット治療を開始、2018年に日本国内で薬事承認を取得。
変形性斜頭・短頭
- 定義:
- 胎生期や出生後の外圧で生じる乳児頭蓋の変形。
- 斜頭(片側後頭部の平坦化)や短頭(絶壁頭)を主徴とする。
- 臨床症状:
- Argenta分類による5段階評価(斜頭はGrade 1~5、短頭はGrade 6)。
- 頭蓋計測(CA: Cranial Asymmetry、CI: Cephalic Index)で重症度を評価。
- 疫学と自然歴:
- 生後5~6か月で46.6%に発生、5歳時には改善傾向が見られる。
- 多くのケースは自然改善が期待できる。
赤ちゃんの頭のかたち外来
- 目的:
- ヘルメット治療の普及。
- 変形性頭蓋の啓発と予防。
- 手術が必要な症例の早期発見。
- 治療プロセス:
- 3か月未満では運動プログラムや育児習慣の見直し。
- 3か月以上で中等度以上の変形が見られる場合、ヘルメット治療を検討。
Michigan Cranial Reshaping Orthosis(MCRO)
- 特徴:
- 頭蓋の平坦部を除圧し発育を促進。
- 前後2分割構造で成長に応じて拡張可能。
- 安全性:
- 皮膚損傷や乳児のストレスが少ない。
- 米国での20年以上の使用実績で深刻な副作用なし。
- 適応基準:
- 中等度以上の斜頭または短頭。
- 治療開始時期は生後6か月以内が望ましい。
ヘルメット作製の手順
- 採型:
- LEDスキャナーで乳児の頭部を3Dスキャン。
- データ整理:
- 軸調整、ランドマーク設定、表面平滑化。
- モディフィケーション:
- 平坦部にボリューム追加、理想的な形状に修正。
- 発注:
- 米国Danmar Products社で陽性モデル作製。
- 調整:
- 成長に応じたスライダー調整やパッドの使用。
- 実績:
- 8年間で400例以上の使用実績、不適合や再製作なし。
薬事承認
- 2018年4月、日本で「頭蓋形状矯正ヘルメット」としてクラスⅡ医療機器の承認取得。
- 医療ニーズの高い機器として選定された経緯。
CAD/CAMによる装具作製の利点と問題点
- 利点:
- ギプス不要、スキャンとデータ作成が効率的。
- 問題点:
- 機器の初期投資が高額。
- 日本では切削器の普及が不十分で陽性モデル入手が難しい。