三次元スキャナーを用いた日本の乳児の頭蓋成長の評価：成長関連パラメーターと変形性斜頭症の関係

論文要約

論文要旨

• 健康な日本人乳児の頭蓋形状の成長を三次元スキャナーで評価し、基準値データベースを構築することを目的とした研究。
• 測定は生後1か月、3か月、6か月の3回行い、頭蓋長、幅、高さ、周囲、容積などの成長関連パラメーターを評価。
• 頭蓋容積は1か月から6か月で約60%増加し、成長は全パラメーターで性別を超えて直線的に増加。
• 変形性斜頭症（DP）は成長パラメーターに影響を与えず、DPの有無にかかわらず頭蓋成長は正常に進行。
• 3次元スキャナーは安全かつ正確で、乳児の頭蓋成長の評価や医療活用に有望なツールであることが示された。

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1. 要旨 (Abstract)

• 研究目的: 健康な日本人乳児の頭蓋形状の成長を三次元スキャナーで評価し、基準値データベースを構築する。
• 測定時点: 生後1か月、3か月、6か月。
• 測定パラメーター:
  • 頭蓋長、幅、高さ、周囲、容積。
  • 頭蓋非対称指数 (Cranial Vault Asymmetry Index, CVAI)。
  • 頭部指数 (Cephalic Index, CI)。
• 主な結果:
  • 性別やDP（変形性斜頭症）の有無にかかわらず、すべての成長パラメーターが時間とともに直線的に増加。
  • 頭蓋容積は生後1か月から6か月で60%増加。
  • DPは成長に影響を与えない。

2. はじめに (Introduction)

• 新生児の脳と頭蓋の成長:
  • 脳の成長に伴い頭蓋も3次元的に拡大。
  • 従来の2次元的な測定（例: 頭囲）では3次元の成長を完全に把握できない。
• 三次元スキャナーの利用:
  • 放射線被曝や鎮静が不要なため安全性が高い。
  • 日本ではデータベースの不足により普及が遅れている。
• 本研究の目的:
  • 日本人乳児における正常な3次元頭蓋成長データを取得し、DPと成長パラメーターの関係を検討。

3. 材料と方法 (Materials and Methods)

• 研究デザイン: 前向き追跡研究。
• 対象者:
  • 2020年4月から2021年4月の間に受診した日本人乳児。
  • 生後1か月、3か月、6か月の3回測定。
  • 早産児、頭蓋矯正ヘルメットを装着した乳児などは除外。
• データ収集:
  • Artec Eva 3Dスキャナーを使用。
  • 頭部の特定ポイント（鼻根部、耳など）を基準に測定。
• 統計手法:
  • 成長関連パラメーターの変化を反復測定分散分析（ANOVA）で評価。
  • CVAIと頭蓋容積の相関を検討。

4. 結果 (Results)

• 参加者の背景:
  • 最終的に88人の乳児（男児45人、女児43人）が対象。
  • 生後1か月の時点での平均頭囲は337.0mm。
• 成長関連パラメーターの変化:
  • 頭蓋容積は1か月から6か月で60.7%増加。
  • 頭蓋長は13.6%、頭蓋幅は19.1%、頭蓋高さは15.6%増加。
  • 男児は頭蓋幅と容積で女児より高い値を示した。
• DPとの関係:
  • DPの有無は成長関連パラメーターに影響を与えない。
  • CVAI > 5%の乳児は全体の43.2%。

5. 考察 (Discussion)

• 成長パターン:
  • 3次元スキャナーは安全で正確に乳児の頭蓋成長を評価可能。
  • 頭蓋容積の増加は各軸方向（長さ、幅、高さ）の増加がほぼ均等に寄与。
• DPへの示唆:
  • DPは成長全体に影響を与えないが、重度の場合はヘルメット療法が有効。
  • 今後、ヘルメット療法の適応基準の検討が必要。
• 3次元スキャナーの利点:
  • 非侵襲的で、乳児に負担をかけない。
  • 医療機器としての登録が日本では進んでいない課題がある。

6. 結論 (Conclusion)

• 健康な乳児における頭蓋成長の基準値が得られた。
• DPが成長に与える影響は軽微で、3次元的な成長評価が有効。
• 3次元スキャナーの医療機器登録と普及が望まれる。